木造平屋建ての住まいは、家族との暮らしを大切にしながら、自宅で静かに仕事に集中できる環境を求めて設計された。住空間の中にはテレワークに適したスペースを設け、生活音や視線から適度に距離を取りつつも、完全に隔てられず日常と自然につながる構成となっている。敷地は旗竿形状で、アプローチや駐車スペースを確保するための車の動線にも配慮しながら建物を配置。建物の外観には縦のラインを強調したガルバリウム鋼板を採用し、シャープな印象を与えながらも、屋根の高さを抑えることで周囲に圧迫感を与えない落ち着いた佇まいを実現している。内部は視線の抜けや動線計画に工夫が凝らされ、柔らかな光が落ち着きのある空間をつくり出している。LDKは家族が集まる中心の場として設けられ、木の素材感を活かした造作家具が生活に寄り添い、空間にやさしいリズムを与えている。さらに庭には敷地造成時に出た残土を活かして築山を設け、子どもたちが遊びまわることができる、自然との関わりを感じられる場をつくり出した。「距離」というテーマは、単なる物理的な分離ではなく、家族同士のつながりや暮らしと仕事の関係性の中に心地よい“間”をつくること。互いに干渉しすぎず、でも確かに気配を感じ合える、そんな静かで穏やかな距離感を、この住まいは丁寧にかたちにしている。