群馬県太田市、母屋の隣に計画されたこの平屋住宅は、家族4人の暮らしを静かに受け止める器として構想された。南側に隣接する工場との距離感や視線の抜けを丁寧に検討し、外部に対しては開きすぎず、内部には明るさと広がりをもたらすよう中庭と開口の計画がなされている。建物の構成は、家全体に回遊性のある動線を備えることで、暮らしに柔軟さと軽やかさを与えている。玄関から水回りへのアクセスを効率化しつつ、居室や共有空間へと緩やかにつながっていくその流れは、日常の動作を自然に導くものとなっている。空間構成においては、構造を現しとした木の架構を活かし、天井高の異なる諸室が緩やかにつながりながらも、視線や気配が届く関係性をつくり出している。それぞれの空間において、家族の誰もが自分なりの居場所を見つけられるよう意図され、広い玄関土間や小さな中庭がその多様な使い方を支えている。限られた平面のなかで、閉じすぎず、開きすぎず、構造と素材を素直に見せながら、豊かな奥行きを生み出す住まい。母屋と隣り合いながらも、新たな暮らしの輪郭を静かに描き出している。